スズキ・メソードだと楽譜が読めなくなる?そんなことはありません!
耳からの教育法であるスズキ・メソード。
多くの演奏家を輩出しているにもかかわらず、このスズキの教育法で育った生徒たちはよく「楽譜が読めない」と揶揄されます。
果たして本当にそれで演奏家になれるのでしょうか?
そんなはずはありません。きちんと楽譜の勉強をしているところがほとんどです。
今回はヴァイオリン教室での取り組みを中心に読譜について書いていきたいと思います。
なぜ初めは楽譜を使わないか
確かにスズキ・メソードの教室で初めから楽譜を使うところは少ないです。
その理由はさまざま考えられますが、まずヴァイオリンの音をきちんと耳と脳に認識させたいことが一番の理由と考えられます。
幼い子どもができることには限度があります。大人の脳はいくつものことが重なっても処理することができますが子どもはそうもいきません。
ヴァイオリンは右手も左手もベストなポジションに形造るまで時間がかかります。ただし、姿勢ばかりやっていても楽しくないのである程度の形が整ったら当然音を出してみます。
その時に最大限に働いて欲しいのは「耳」です。「耳」に全神経を集中して欲しいのでまだこの時点では楽譜は見せません。
もちろん初めから曲を弾くわけではないのでまだ楽譜が必要ないということもありますが、スズキ以外の教室によっては姿勢や持ち方も楽譜に書いてあることを参考にさせるところもあるようです。
さらに楽譜を見ることの弊害として「姿勢の悪化」が考えられます。
生徒はよく見ようと思って譜面台に寄っていくので置き方によっては楽器と弓が左右に開いていってしまい、演奏時の姿勢がとても悪くなります。
このことも初めから楽譜を使わないことの理由のひとつです。
どうやって曲を覚えるのか
では、楽譜を使わずにどうやって曲を覚えるのでしょう。
それこそが「耳からの教育」です。
スズキの教本には必ず参考音源と伴奏、また練習の仕方が収録された練習用のCDが付属しています。
入会を考えている生徒にはまだ見学の時点からこのCDを聴いて貰います。スズキ出身の演奏家の素晴らしい演奏で「キラキラ星」や「ちょうちょう」などの初歩の曲を聴くことができます。
そしてレッスンが始まった時にはすでにキラキラ星は覚えてしまっています。弾けなくても歌えるくらいに耳が育っています。
もちろん曲を弾く前にヴァイオリンの基本的な弾き方などレッスンしなければなりませんから、歌えるからといってすぐに弾けるということではないです。でも、歌えない曲はほぼ弾けないといっても間違いではないので「歌えること」はひとつの大きなアドバンテージです。
いよいよ弾く時に
ヴァイオリンの持ち方やリズム練習、そして音階のおけいこなどを経ていよいよ弾く!という時にはすでに頭の中に「キラキラ星」が流れています。子どもたちはそれをなぞればいいだけです。
基本を予習してそれを曲に当てはめればキラキラ星は弾けます。
ただし、耳がしっかりと働いていることが前提です。ここで重要なのが耳なのです。
正しい音を聴き分ける能力が身についていないと曲に入っても綺麗に演奏することができません。逆にきちんと手順を踏んでその能力を育てていられれば、そう難しく感じることなく弾くことができます。
楽譜はどこから使う?
スズキ・メソードの1巻、2巻はヴァイオリンの第1ポジションしか使いません。そのためまだこの時点では耳だけで弾いていても特に問題はありません。
音楽の抑揚や音の強弱についても参考音源をしっかり聴いていればそのように身についていきます。
その後、教本の3巻に進むとポジション移動が出てくるためそれまでの耳に頼った演奏法だけでは対応しきれないことになりますので、その時点から楽譜も併用していくのがいいでしょう。
といってもいきなり楽譜を示して「はい、このように弾いてね」といってもできるわけはないので、そこから丁寧に説明をしていくことになります。
まずは楽譜の仕組みから
まず楽譜を譜面台に立てて仕組みを説明します。
その時点では学校で「ト音記号」や「四分音符」などの用語を勉強していることもありますので、まるっきり分からないということはありません。
楽譜の作りを理解し、そこから音符の位置をヴァイオリンの楽器に当てはめていきます。
ヴァイオリンはその作りの特性から「ラ」の音を基本にスタートします。そのためスズキの教本は「イ長調」から始まっています。
一般的な「ドから始まる音階」ではないので注意が必要です。
記号の意味
そして「フォルテ」や「ピアノ」といった言葉に対する記号を示します。
『これが書いてあったら大きくするんだよ?』
といった具合です。
どこを大きくしたらよいかなどはすでに鍛えられた耳で参考音源から学びとっているので簡単です。視覚的な部分を補足するだけです。
そのため子どもたちは慣れてくれば自分から記号に沿って演奏できるようになります。
指番号の弊害
スタート時はほぼ指番号でヴァイオリンを弾きます。曲を覚えていくにはこれも有効な方法のひとつです。
ただ、ポジションを移動するようになると指番号には限界が出てきてしまいます。
そのため初めは楽譜に番号を書き込みして弾くことになります。この習慣がかなり上級生になっても抜けない子どもたちもいます。
この「指番号」の使用は良し悪しで、まだヴァイオリンの演奏に慣れていない幼いうちはいいのですが、ポジションが出てきても指番号に頼っていると、間違えて弾いていても気づかないということが起きてしまいます。
ここに関しては指番号の使用の弊害と言えるでしょう。改善していきたい点ですね。
読譜の必要性
曲が進むにつれてもちろん読譜という能力は必要になります。自分で楽譜が読めてこそ音楽を最大限楽しむことができるからです。
それには普段レッスンしている曲以外に「初見のおけいこ」を併用していくのがいいでしょう。
どういったやり方があるかといえば、レッスン時に楽器店などに置いてある簡単な演習用の楽譜を使う場合や教室で読譜のクラスを設ける場合などいろいろな方法が考えられます。
教室での取り組み
教室全体で取り組んでいるところでは同程度の曲をレッスンしている子どもたちが集まって学校の授業のように楽譜の勉強をしています。
初年度は本当に基本からのスタートで「ト音記号」「五線譜」などを覚えるところからです。
月1回など定期的に開かれているこの読譜クラスでは回が進むごとにレベルを上げていき、年度が終わる頃には簡単な楽譜であれば初見で弾きこなせるようになります。
そしてその能力を定着させるために1年間だけではなく2年、3年と続けていきます。ただし、行われている内容は毎年同じなので2年目も「ト音記号とは」というところから始まることになります。
実はこれが重要で、同じことを繰り返していくことによって能力がより育っていくことになります。1年目より2年目、3年目のお子さんの方がより能力が育っているのは必然です。
そしてここから各自の個人レッスンでも自分の楽譜を読めるようになっていきます。
楽譜が読めなければ心から演奏できない
このようにスズキ・メソードでの各教室ではそれぞれが独自の方法で楽譜を読むことを指導しています。世で言われているような「楽譜を読めない」という批判はあたりません。
ただ中には読めないまま大人になってしまった方もあるでしょう。そうした人たちが特にクローズアップされてしまうのも仕方のないことなのかもしれません。
初期の「耳からの教育」だけを取り上げると永遠に楽譜は読まないのか!?との誤解を受けるのも分かります。そんなことはありません。しかるべき時がきたらみんな楽譜の勉強はしています。
楽譜を読まずしてモーツァルトやバッハの真髄に触れることは不可能です。
この偉大な演奏家の想いを心から人に伝える演奏をするためには読譜の能力は絶対に必要です。
スズキ・メソードの理念は「豊かな心を育てる」というところにあります。そのためにも子どもたちは「耳」に頼るのみではなく心からの感動を伝える演奏となるよう日々あらゆる努力をしています!
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