スズキ・メソードは何かの宗教!?実際はどうなの?

インターネットなどでは

「スズキ・メソードって何かの宗教？」

という声がよくきかれます。

いえいえ…そんなことはありません。スズキ・メソードは音楽を通して心を育てる教育法のひとつで、宗教団体ではありません。

ただ、日本武道館や両国国技館で行なわれたグランドコンサートの際に「スズキの標語」のようなものを大勢で唱和している映像などが取り上げられると、音楽教育なのか宗教団体なのか分からなくなってしまうことも理解できます。

今回はなぜスズキが宗教っぽく語られてしまうのか、本当はどうなのか探っていきたいと思います。

スズキ・メソードの理念

スズキ・メソードはヴァイオリニストで音楽教育家であった故・鈴木鎮一が提唱した幼児教育で、松本に本部を置く公益社団法人のひとつです。

「どの子も育つ 育て方ひとつ」

という教育理念を掲げ、才能は生まれつきではなくおかれた環境によりどのようにも育つことができると謳っています。

おかれた環境というのは、家庭であったり教育現場であったりまた生まれた国であったり…さまざま考えられます。

例えば日本に生まれ育ったら日本語が話せるようになります。これは一見当たり前のように感じますが実はすごいことなのです。

なぜなら「教わっていないのにできるようになっている」ことだからです。

この「当たり前のこと」に気がつき「なぜだろう・・？」と考えたのが鈴木鎮一です。

人は環境の子なり

日本人に生まれたからには誰もが日本語を話せるようになる、これは先ほど述べた通りです。

なぜそのように育つのか・・それは周りが全員日本語を話しているからです。

赤ちゃんのときから子どもは母親の話す日本語を聞いて育ちます。まだ言葉を知らない乳児のころから日本語の環境におかれ耳から吸収しているのです。

これが「人は環境の子なり」という理念です。

この乳児の時期にいっさい言葉のない環境に子どもがおかれたらどうでしょう？もちろん話すことなど覚えようがありません。

育っていく過程において環境とは絶対的に重要な要素なのです。

才能は生まれつきではない

こうしたことを考えたとき、才能はかならずしも生まれつきではないと言えます。生育過程で、またおかれる環境によってどうとでも変われるものなのです。

もしも著名な演奏家の子どもとして生まれて一切音楽を聴かなかったとしても、遺伝子の力で演奏家になれるのでしょうか？そんなことはありませんよね？

誰もがたゆまぬ努力をしているのです。「親が演奏家」という良い環境に囲まれているのでその努力が報われるのです。

このように環境によって才能はどうとでも伸ばすことができるのです。生まれつきで何もかも決まってしまうなんてありません。

どの子も育つ

こうしたスズキの理念はレッスンを続けていると繰り返し耳にすることになります。

先生はレッスンの中でも、またイベントの中でもこれらの言葉を親御さんにお話しします。そうしてスズキの理念を理解していただき子どもたちを豊かな心を持った人へと育てていきます。

そのことが一部では「宗教のようだ」と言われてしまうのも分かります。

3000人の子どもたちが一斉に演奏するグランドコンサートでも全員で唱和します。

これだけの子どもたちが

『どの子も育つ 親次第！』

と声をあげていたら、確かにそれは何かの洗脳のように感じるかもしれません…

しかし日頃レッスンでもコンサートでもこの言葉を聞き、感じとっている生徒さんと親御さんにとっては普通のことなのです。

でも一般の方からしたら少し奇妙に映るかもしれませんね。

ただスズキ・メソードには70年を超える実績がありますからこの言葉が真実であることは間違いありません。このメソードを続けてきてよかったと必ず誰もが感じます。

音楽を通した教育

スズキ・メソードはこうした音楽を通した人間教育により今やあらゆる分野で活躍する人物を世に送り出してきました。

演奏家のみならず各界の第一線で活躍する人々が実はスズキの出身であったという例は数多くあります。この一貫した教育方針は楽器の演奏だけにとどまらず子どもの「生命の力」の素晴らしさを証明することにほかなりません。

大人数での演奏や標語の唱和がある種宗教的に映ることは確かですが、このメソードの本質に触れた時はじめてその意味がわかるのです。

優れた人物として豊かな一生を送れるよう、子どもたちの幸せを一心に願うスズキ・メソードの教育を深く知るほど宗教とは程遠いと理解できることと思います。